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台湾研修報告--屋久島流台湾考 1

・台湾でどこに行ったの?

今回の台湾研修旅行の大きな目的は、屋久島のビッグ・マザー的存在の台湾を屋久島の目線でみることでした。


私たちが住んでいる屋久島は、北緯30度にあり、温帯と亜熱帯の境に位置する島で、標高1936mの宮之浦岳がそびえています。かたや台湾は、九州と同じぐらいの面積を持ち、真ん中に北回帰線が通る亜熱帯と熱帯にまたがる島国です。


今回私たちが訪れたのは、台湾北部の達観山自然保護区、棲蘭神木園、福山植物園というところです。


まず最初に訪れた達観山(takkansan)自然保護区は、標高約1600m付近に位置します。この達観山自然保護区は、22本の巨木(主に紅檜)が木道から観察できます。


巨木も良かったのですが、紅檜のまわりに育っている照葉樹も印象的な場所で、屋久島の屋久杉ランドをグレードアップさせたような場所でした。



達観山21号巨木の前でスタッフ集合写真達観山21号巨木の前でスタッフ集合写真

達観山自然保護区の森達観山自然保護区の森達観山自然保護区の森

紅檜の倒木紅檜の倒木

達観山のヤマグルマ達観山のヤマグルマ

神木園/司馬遷神木神木園/司馬遷神木

次に訪れた棲蘭(chilan)神木園も標高約1600m付近に位置します。神木園は入り口にゲートがあり、前もって申請をしておかないと立ち入ることができません。


ゲートから車で林道を走ると林道脇には日本のスギが植えられていました。時々車から降りてガイドの林さんから植物の説明を聞いたりしながら、40分ほど進むといよいよ神木園に到着。


神木園は一度伐採された場所で巨木以外は切られてしまった場所でした。前日訪れた達観山と比べると原生状態の差は歴然でした。しかし達観山に比べると台湾の東部に位置していて湿潤な気候なので、苔むした場所が多くとてもきれいでした。またコケの上には、達観山では見ることができなかったバイカオウレンの仲間(ミツゲツオウレンと呼ぶこともある)が咲いていました。

神木園1

神木園2

神木園3

最後に訪れたのは福山植物園で標高約600mに位置します。ここも棲蘭神木園と同じく前もって申請しないと入れません。入るとき、外国人はパスポートもチェックされる厳重さでした。


中に入るとボランティアのガイドの方が何人か常駐していて分からないことがあれば教えてくれました。おもしろいボウさんという女性ガイドさんが、かなりテンション高く案内してくれました。


植物園内は、裸子植物区、竹区など分かりやすく区分けされていて台湾の植物全般を知るには最適な場所でした。結構家族連れが多く、台湾で森林浴がはやっているのを実感しました。

山植物園のカンヒザクラ山植物園のカンヒザクラ

家族連れでにぎわっていた家族連れでにぎわっていた

福山植物園

・屋久島と台湾の垂直分布の違いって?


台湾での垂直分布(中正国際空港~達観山~棲蘭~宜蘭~福山植物園)でひときわ目についたのは、屋久島では約300m以下に分布するウラジロエノキが約1500m付近まで見られたことでした。標高1500mまでは亜熱帯の植物も目立ちました(ヘゴの仲間など)。


屋久島の麓の雰囲気が1500m近くまで続いている感じがしました。標高1250mぐらいを車で走っていると屋久島の西部林道を走っている錯覚におちいるぐらい屋久島と似ていました。


ただ標高1500mを越えたあたりから風景が一変し、紅檜など針葉樹がではじめます。まるで屋久島の600m付近の変化をみているようでした。


台湾の垂直分布は屋久島の垂直分布を大きく縦に引き延ばし、さらに亜熱帯のラインを上に引き上げたような印象でした。




屋久島と台湾の垂直分布の違い

・屋久島と台湾両方に分布する植物


台湾の研修旅行中、森を歩いたり、道を車で走っていると屋久島にいるような錯覚に陥ることがありました。よーく見てみると屋久島にも育っている樹木がたくさんありました。台湾もしくは大陸と屋久島は昔陸続きだったのだと実感しました。


屋久島と台湾両方にある主な植物をまとめてみました。(台湾自然植物史系列8参照)

台湾報告1-1

台湾報告1-2

◆メタセコイア植物群について


200数十万年前の日本列島にはセコイア、メタセコイアをはじめランダイスギ、タイワンスギ、イチョウ、フウなどが茂っていたと言われています。この時代の化石は、メタセコイア植物群と呼ばれています。


約200万年前から気候は少しずつ寒くなりはじめ、セコイア、タイワンスギ、フウなどはこのころ日本から姿を消してしまいました。寒冷化は次第に進み約100万年前には最初の氷期がやってきてメタセコイア植物群は日本ではすっかりほろんでしまいました。


それらの植物は日本ではほろんでしまいましたが、セコイアは北アメリカ(カリフォルニア)で生き残り、他は中国大陸や台湾で生き残りました。



メタセコイア植物群

・研修旅行で出会った台湾の主な針葉樹一覧


今回の台湾研修旅行では、「台湾の針葉樹に出会いたい」というのが一つのテーマでした。実は約200数十万年前、日本にはランダイスギ、タイワンスギなど、現在台湾だけに分布している針葉樹があったことが化石から分かっています。そしてなんと日本のスギは、タイワンスギから進化したのではないかという説があるのです。また日本のヒノキに近い仲間のタイワンヒノキもあるということで、台湾に行きたいということになりました。


それでは実際に台湾で出会った針葉樹たちを紹介します。

ベニヒ(紅檜)


ベニヒは日本のサワラに近い仲間で、台湾では主要な木のひとつです。高さは60mに達し、幹の直径は7mにも達する物もあります。また明治神宮の鳥居や奈良県薬師寺の再建には台湾のベニヒが使われています。


急斜面に生えているためか枝から幹、根に沿って縦筋の極度の板根状になっているものを多く観ました

木肌は、赤みをおびている。木肌は、赤みをおびている。

ベニヒ(紅檜)

タイワンヒノキ(臺灣扁柏)

タイワンヒノキ(臺灣扁柏)


タイワンヒノキは、日本のヒノキに近い仲間です。紅檜を見ることができる場所よりも200mほど標高が高い場所から目にすることができます。紅檜にとても似ていて私たちは、パッと見た目では紅檜と区別がつきませんでした。


ちなみに日本でも知られているヒノキチオールという物質の名前は「タイワンヒノキ」に由来するものです。1930年代に野副鉄男氏(当時台北大数授)がタイワンヒノキ材の精油を研究している内に結晶を得て、これをヒノキチオールと命名したものです。

タイワンスギ(臺灣杉)


タイワンスギの幼木はスギそっくりらしい(今回、幼木には出会えなかった)。ところが成長するにつれて先端部でつくられる葉が鱗片状(ヒノキの葉に似てくる)になり、1本の木の上下で葉の形が異なってきます。


タイワンスギは1906年、植物分類学者の早田文蔵が台湾の玉山で採集された標本をもとに発表され、その後、台湾山脈に広く分布することが明らかになりました。自生では種子をつける成木になるまで100年かかると言われています。

木肌は、赤みをおびている。木肌は、赤みをおびている。

タイワンスギ(臺灣杉)

タイワンツガ(鐵杉)

タイワンツガ(鐵杉)


日本の栂に近い仲間。今回訪れた達観山の上部を森を遠くから眺めると屋久島の栂の森にそっくりでした。


タイワンツガは台湾産針葉樹のなかでもっとも堅い材なので、"鐵杉"の名がついています。

ランダイスギ(香杉)


ランダイスギは中国にあるコウヨウザンに極めて近い仲間です。枝に螺旋状につく小さく細かい葉の寿命が約8年と長く、球果か小さいことなどからコウヨウザンと分けられていますが、幼木での区別はとても難しいです。


屋久島でもコウヨウザンが一部植林されていますが、スギと同じく良い木材が取れるため、台湾ではよく植林されています。

ランダイスギ(香杉)

最近の研究から、ヒノキ科全体がスギ科のスギやスイショウと近縁で、スギ科のなかのごく一部を占める一群であるとする結果が示されてきています。化石の記録でもヒノキ科の初期の化石は意外と新しく、白亜紀の後半(8000万年前)以降にしかみられないことからスギ科(約2億年前の化石が知られている)から分かれた新しい仲間だと考えられています。またヒノキ科のミヤマビャクシンでは、スギのような針葉が混じることもあります。

スギの幼木スギの幼木

ヒノキの幼木ヒノキの幼木

紅檜の幼木にはしばらくスギのような針葉が残りますが、台湾ヒノキの幼木は針葉状の葉がすぐになくなり、比較的ヒノキの幼木に似ています。紅檜のほうがスギ科に近いのでしょうか?

紅檜の幼木紅檜の幼木

タイワンヒノキの幼木タイワンヒノキの幼木

・紅檜とサワラの葉の比較、台湾ヒノキとヒノキの葉の比較


紅檜とサワラ、タイワンヒノキとヒノキは近い仲間なので、何か共通点はないかと比べてみました。


紅檜とサワラでは、・葉の先が鋭い。・鱗片状の葉がほぼ一定の大きさで並ぶ。などの共通点があります。

紅檜紅檜

サワラサワラ

タイワンヒノキとヒノキでは、・葉の先が鈍い。・二つ折りになった葉と小さな葉が交互に並ぶ。などの共通点があります。

タイワンヒノキタイワンヒノキ

ヒノキヒノキ

・クスノキの仲間とカシの仲間の多さにびっくり。台湾は照葉樹林帯の本場なのだと実感。


照葉樹林って何でしょう? 常緑の広葉樹を優占種とする樹林で亜熱帯から温帯に発達しています。日本では九州・四国・関東までの沿岸部に分布しクスノキ・シイ・ツバキなどが主要な木々です。葉は革質で光沢があります。


台湾にももちろん照葉樹林が広がっているのは知っていたのですが、クスノキ科、ブナ科の種類の多さにびっくりしました。台湾のクスノキ科は35種、ブナ科は18種です(台湾自然史系列8参照)。ちなみに屋久島では、クスノキ科は12種、ブナ科6種です。台湾は照葉樹林の本場だなとしみじみ感じました。 そして屋久島の照葉樹林帯は、ヒマラヤから東に伸びる照葉樹林帯の東の端っこなのだと改めて気づかされました。

台湾のマテバシイLithocarpus synbalanos/菱果石櫟台湾のマテバシイLithocarpus synbalanos/菱果石櫟

台湾のマテバシイLithocarpus synbalanos/菱果石櫟台湾のマテバシイLithocarpus synbalanos/菱果石櫟

台湾のマテバシイLithocarpus synbalanos/菱果石櫟台湾のマテバシイLithocarpus synbalanos/菱果石櫟

屋久島のマテバシイ屋久島のマテバシイ